高精度加工機械の操作技術を磨く「xRアプリ」
リアルなトラブル再現、学習コストの低減で製造現場の人手不足に貢献
金型設計・部品試作・研究事業等を行う一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄(うるま市、金城盛順代表理事)は、令和5年度沖縄県ICTビジネス高度化支援事業を活用し、自動車のエンジンの各種部品を作る金型製造や、一品物の部品製作など多くの製造現場で使用されている高精度の工作機械「マシニングセンター」(※1)の操作技術の習得を仮想空間で体験できるxRアプリケーションの開発に取り組みました。VRゴーグルをセットにし(※2)、慢性的な人手不足に悩む製造業の若手技術者育成・工業高校等の教材としての導入を目指しました。
※1 マシニングセンター(Machining Center)は、主軸に回転工具を使用して高速回転させ、自動で工具の交換を行いながら材料に直接工具を当てて加工する工作機械。自動車のエンジン部品や、ボディ部品の金型製造などで使われている。
※2 xR(クロスリアリティ)は現実には存在しないものをデジタル表示することにより、新しい体験を作り出す技術の総称。xRにはAR(拡張現実)VR(仮想現実)MR(複合現実)SR(代替現実)が含まれる。
- 令和5年度ICTビジネス高度化支援事業
- 技術高度化ステージ
事業の目的
製造業は労働力不足や人材の流動化によって、従来のような人手と時間をかけた技術の継承がますます難しくなり、生産性の低下・労働環境の悪化など、負の連鎖を防ぐ対策は待ったなしの状況にあります。これからの若手技術者育成には、IT技術を活用し、現場では体験させにくい失敗事例を学ばせる機会が重要と捉えました。そこで今回、当社の金型製造の実績とデジタルエンジニアリングの強みを活かし、高精度工作機械であるマシニングセンターの操作技術を仮想空間でリアルに効率よく学習できるxRアプリケーション開発に着手しました。
実施内容
マシニングセンターは自動車や医療機器など、高精度・高効率・高品質な部品を自動で生産するのに重要な機械であり、技術の習得は約3年かけて、実地でベテランが指導するOJT教育が一般的です。マシントラブルの多くは経験の浅い技術者による人為的なミスで発生することが多い一方、失敗体験の数=スキル習得につながっています。しかしマシンは高額な精密機械であり、生産を止めて人為的な不具合等を体験させることは難しいのが現実です。そのため今回は、現実の施設空間に3DCGで機械を原寸表示し、360度どんな視点からでも構造を確認でき、操作を体験できるxRアプリケーションの開発を目指しました。
事業の成果
実際の工場内をスキャンし、マシニングの3Dデータをデジタル空間に再現した「デジタルツイン工場」では、空間に表示される指示に従い作業手順を確認しつつ、不適切な作業を行った場合の故障音・折れた工具の飛散・加工物の削りすぎの発生など、現実さながらのトラブル体験が可能です。現実では体験には損傷リスクも要しますが、仮想空間であれば生産性を損なわず、安全に短期の学習ができます。今回、具体的な指導の課題抽出を目的に、県内工業高校5校や企業のヒアリングと、任意の被験者2人に対し、従来のマニュアル学習とアプリ学習を体験してもらい、効果を比較・検証しました。
事業の展望
上記ヒアリングでは、マシニングを制御するプログラミングの自由な組み立てを希望する声がありました。また大手輸送機械メーカーからは、危険作業に従事する職員向けの操作指導マニュアルとしての活用を期待する声もいただいています。しかしアプリでは操作のリアルな感触までは味わえないため、数値入力やスイッチの切り替えなど、操作時の緊張感をアプリに反映させる装置の製作などの課題は残っています。今後も引き続き、従来の指導手法とアプリ学習の効果を比較・検証しながら、インタラクティブな機能、適正価格等の精査を行い、競合他社との差別化を図りたいと考えています。
構成企業※内容は事業採択時のものです
一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄
代表者名 | 金城盛順 |
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事業内容 | この法人は、ものづくりに関する優秀なエンジニアを育成し、沖縄県の製造業の活性化を図るとともに、経済的に自立した沖縄県の発展に寄与することを目的とした事業を行う。 |
設立年月 | 2012年1月 |
住所 | 沖縄県うるま市勝連南風原5192番地30 |
TEL | 098-923-0877 |
Webサイト | https://mdn-okinawa.or.jp/service/flow/ |
ISCOハンズオン支援内容 | 遂行状況の確認・助言/事業報告の確認・助言/テストフィールドの発掘/技術情報展開支援/ビジネスモデル事業化支援/成果事例報告会の実施/年間有識者の派遣 |
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