人手不足に県産「搬送ロボット」開発
現地生産とメンテナンスで究極のコスト削減めざす
電力会社向けの監視システムの設計・製造・販売等を行うシステムインテグレーター(Sler)「カサイエレック」(愛知県、葛西泉社長)は、自動車用スイッチメーカー「カサイ製作所」(愛知)のグループ会社として2014年に設立されました。当社は17年、糸満市に沖縄営業所、22年より沖縄唯一の産業ロボット教習施設「沖縄デジ・ロボ・ラボ」を運営する県内でも数少ないロボットSler企業です。人手不足が徐々に深刻化する沖縄県においても、ロボットを使った自動化への関心は高まっています。そこで令和5年度沖縄県ICTビジネス高度化支援事業を活用し、県産搬送ロボットシステムの開発に取り組みました。
- 令和5年度ICTビジネス高度化支援事業
- 技術高度化ステージ
事業の目的
物流・観光関連産業など約40社にヒアリングした結果、コロナ禍による人材損失の影響は大きく、全社が省力化に高い関心を持っていることが分かりました。一方で沖縄にはAMR(※)等のメーカーがなく、高い輸送コスト、修理などのアフターフォローも本土からの移動に依存するしかありません。一方、一般的なニーズの範囲で開発される汎用ロボットでは、観光・物流の先端を行く沖縄特有の装飾や耐塩性に対応が難しく、使い勝手の悪さや型遅れ感のある割には高額という、費用対効果を感じづらい環境もあります。そこで製造からメンテナンスまで一貫した搬送ロボットシステムの開発に取り組むことにしました。
※AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、自律走行搬送ロボットのこと。カメラやセンサー等によるセンシング機能を活用し、人や障害物を避けて走行する。人と稼働範囲を共有している場所でモノを運ぶ協働型搬送ロボットとも呼ばれる。
実施内容
沖縄県を中心とした搬送ロボットシステムの研究開発と販売体制の確立
(1)用途別の仕様についてマーケティング調査を実施。
(2)搬送ロボットの筐体設計図(1点)・3Dプリンターによる樹脂部品の製造(2点以上)。
(3)産業ガス販売等を行う沖縄エア・ウォーター(豊見城市)にて導入試験を行い、得られたデータを反映し、搬送ロボットシステムの「紹介手順書」と「テスト導入マニュアル」を作成しました。
今後はさらに「沖縄県内での搬送ロボット本体の製造実証」、「沖縄県内での搬送ロボット本体の修理・メンテナンス体制(保守・廃棄)の確立」を計画している。
事業の成果
搬送ロボットは筐体とAMR部分に分けられます。AMRは日米中メーカーでレッドオーシャン化しており、県内で内製化を図ってもコストメリットが出ません。一方で筐体部分は、利用現場によって仕様が変わるため、我々中小ロボットSlerが参入できる市場の「余白」です。金型を使わない、3Dプリンターでの樹脂製部品製造であれば少量多品種に対応可能です。当社のAMR部分ですでにオムロンと提携しており、筐体部の設計・製造に関してはグループ内に知見を有しています。中国製のロボットを輸入販売するだけの競合に対し、改造やメンテナンス、修理まで提供できる安全性や信頼性は優位と考えます。
(完成品で来るので、競合はソフトにも触れません)
事業の展望
観光施設・ホテル・行政の案内・警備、観光客が多く訪れるショッピングモール内の動くデジタルサイネージなど、台風などの天候に左右されない屋内は、ロボット導入に最も適した環境です。メーカーとして本事業を確立できれば、導入後のメンテナンス市場・中古市場への進出も期待できます。将来的には、島の中にロボット製造を中心とした産業・雇用を創出する「搬送・観光ロボット産業クラスター」を構築し、沖縄高専や琉球大学でロボット工学・システム開発等を学ぶ理系人材を観光エンジニアに育てたいと考えています。
構成企業※内容は事業採択時のものです
カサイエレック株式会社
代表者名 | 葛西泉 |
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事業内容 | 無電極ランプの製造販売事業、システムインテグレーター(略称SIer)・ロボットSIer事業、NTN自然エネルギー商品のSier及び代理店事業 |
設立年月 | 2014年8月 |
住所 | 本社:愛知県丹羽郡大口町河北二丁目490番地 沖縄事業所:沖縄県糸満市西崎6丁目18-1スカイビル1F |
TEL | 0587-81-5276 098-992-3000 |
Webサイト | http://www.kasai-elec.co.jp |
ISCOハンズオン支援内容 | 遂行状況の確認・助言/事業報告の確認・助言/テストフィールドの発掘/技術情報展開支援/ビジネスモデル事業化支援/成果事例報告会の実施/年間有識者の派遣 |
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